95.4.14 たいせつなはなし
(94年に自主で出した詩集「DIALOGUE」より)


TVはもう映画とボクシングぐらいしかやってないし

あなたとの話を預けるものもない 言葉が途切れるからFENをつけるのも

なんだかつまらない かといって抱き合って眠るほど疲れてもいない

ソウ、所詮二人は「愛し合ってる」なんて言葉に甘んじては

まんじりともしない夜を何回過ごしたことか

憐れみの体を横たえては 互いの体を貪ったことか

目をそらしたものの多さは もう痛いほど知っているのに

 

逃げ出したかったのは誰のせいでもない それは長い人生のことだから

何も今に始まったモノでもない

それが間違いだとか正しいだとか 自分の胸に訊いても返ってこないし

だけどありふれた言葉であたし達は傷付け合って

そのくせありふれた言葉でコトを済まそうとした

 

1+1=2だなんてさ、そう、すでに判り切っていて

そのクセ言葉はケチったりして

鎖骨の下から乳首の辺りまで 黒いモヤをかけては

それぞれが悲劇の主役になり

 

そうして自らのスクリーンに結んだ焦点を

ツマラナイ プライドでかざりたてては 自分の今居る場所は正しいだなんて

違うよ、喧嘩したい訳じゃなくて 突然馬鹿らしくなってしまったの

 

これまた逃れようのない真実はそう、あなたもあたしも単なる いち個体

それぞれの場所にぽつねんと置き去られ 風にふきさらされているばかり

流されていく一瞬は妥協と後悔の中

動き出すその時はそれこそ鬼のクビを取ったイキオイ

そうね、プライドなんてあってないようなもの

まるでたくさんの事件が己の身に振り被っているようにいつも

被害者の顔をして

 

だけど本当の事件などたったひとつ

それはあの時あたし達が生み落とされて 今ここに存在すること

あたし達は被害者でもなんでもなくて

実は被疑者であること

それぞれはそれぞれの場所にぽつねんと置き去られ

風に吹きさらされているばかり

ああ、またそうやって笑うんだね

風に吹きされされているばかり

 

 


エッセイ目次

ホーム