最後の証人Page.6


 あたしの形のない戦いは、いつまで続くんだろう?
そして、あたしが路上で見てきた人の戦いは、いつまで続くんだろう?
あたしの大切な人たちの戦いは、いつまで続くんだろう?
生き続けていてもたやすく答えなんて見えないだろうが、生き続けなければ、また、答えは見えないのだろうか・・・。


 彼女は愛されたがっていた。あたしは街の毒気を体に刻みたがった。
繰り返し積み重なる、得体の知らない苦しみと戦う為に。
彼女の苦しみはおそらく彼女だけのもの。
そしてあたしの苦しみは、あたしだけのもの。


 その場所に楽に辿り着く方法なんてない。たいがい道はまっすぐなようでいて、歩いてみて初めて曲がり角の存在を知る。誰に決められた訳じゃない、自分で決めたんだと言い聞かせ。
繰り返し続く。ほとほとうんざりする中で、せめて何か証は欲しい。ほんの僅かだけでいい。


そうして又、路上に立っている。
そう、だいぶ長い間同じ街、同じ場所に立ち続けていれば、行ってしまう人を見送ってばかり。だけど、どうやら、骨の髄から、あたしはこの道を選んでしまって、どうやら、ここからは、降りられないらしい。それが、例えこの場所・・新宿東口アルタ前小ガードじゃなくなってしまっても、きっと何処かで唄い続けているんだろう。それが、偉い、偉くないとかなんかじゃなく、あたしは、その時代に立ち止まって確実に見てしまった。
 時々後悔をする。もう止めてしまおうかとも思っている。だけど、いままで出会った人や、見てきたものの影たちが、あたしを決してそこからは逃がしてくれない。
あたしは、彼女が生きている最後の証人になれて良かったと思っている。・・・後悔なんてそりゃ・・沢山残ってる。だけど、あたしに何が出来るかって言ったら、せいぜいこの街の側に立っていて今の今の証人になって唄い続けていく事ぐらいしかできない。


 せめて、自分が生きるしかないんだろう。
弔いのつもりで、あたしは唄った。

「頭から爪先まで街の毒気 晒されて 
 何がどうしてこうなったか すっかりてんで判らない
 あたしが売女になった事 ママが知ったら悲しむけれど
 後悔なんて捨てちゃいたい 結果が良けりゃそれでいい・・」


ロンサム・ストリート・ガール・・売女の唄を唄い終えてから、さあ、この鎖骨の下に憶えている彼女の体温をどこにしまっていこうと、次の煙草に火をつけた。

END


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